パリ・ダカールラリー・スペシャル

ゲームタイトルだけをとると、ラリーレースゲームを想像するが、その実は全く違う。その全容をここで明かすことにしたい。想像力をかきたててお読みいただけると幸い。


主人公はパリ・ダカに出場するドライバーである。そのために日本で準備を整える、アドベンチャーパートがスタートする。
必要なものや人を揃え、ラリーへ登録することで本編へ進める。しかし、なかなか侮れないこのパート。
相手に対して質問すると、こっちが聞いているのに「よくわかりません?」となぜか「?」をつけて返される。
さらにはスポンサーからいきなり預金通帳を渡され、銀行で自力でお金をおろさなければならない。暗証番号はなぜか外回りをしている課長を探し出して聞き出すことになる。しかも暗証番号は持ち物扱いで、アイテム欄に暗証番号そのものが4桁で表示されてしまうという、常識をはるかに超越した展開に度肝を抜かれる。
この中で、大事なナビゲーターを決める反射神経ゲームの存在を忘れてはならない。このゲームの成績によりナビゲーターの格が決まるのだが、何の説明もなく唐突に始まり、説明は画面の中に書いてあるという超不親切設計。成績が悪いと何度でもやり直せるのだが、「もういちどやりますか?」という聞き方をしてくるので、良い成績を取っても間違えて再度やってしまうことがあり、タチが悪い。
さて、いよいよ本編ステージ1。このステージは、縦スクロールのアクションゲームである。道路上にある敵の車やトラック、障害物をかわしながら進んでいく。しかし、なぜか横からドラム缶が飛んできたりする、いきなり参加者を殺す気満々の展開に、震え上がれる。
ちなみに、誤って障害物に衝突してしまうと、自分の車が左前・右前・後ろの3つに裂けるように大破するので、さらに恐怖心を煽られる。さらに、最後の車(ライフ)を失った瞬間、車は大爆発を起こす。
しかし、ゲームオーバーの画面では、しっかり無事な車の横で泣いているドライバー。お前は本当にこの車に乗っているのか
命からがらゴールに到達すると、なぜかシーソーでアイテムを回収するミニゲームがスタートする。このゲームは本編のステージの合間に挿入され、「T」と「G」の量により、次のステージでそれぞれ残りタイムと燃料の量が加算されるようになっているが、優勝するためには短いタイムでのクリアが必須となる上、燃料切れでゲームオーバーになることはほぼないと言ってよいため、このミニゲームは存在意義すらない。
ステージ2は、市街地の狭い道路を上に向かって抜けていく、背景をなくしたら「ラリーX」のようにも見えるアクションゲームになっている。
ボタンを押すことで車の後ろからオイルのようなものが撒かれ、敵の車がぶつかると向きを変えるという不思議な効果があるが、これはひょっとしたらオイルではないのではないかという疑惑が持ち上がる。おまけに、使用回数に制限はない上、同じオイル(のようなもの)に敵の車を2回当てることで、タイムアイテムに変化するという謎の効果がある。
このステージは、画面左端に一直線に上に伸びる道があり、ここをいかに進むかがカギになるが、後ろからものすごいスピードでトラックが突っ込んでくる(当然ノンブレーキ)ので、オイルを撒いて回避しないと車が大破してしまう。
ちなみに、このトラックに他の車が当たると、その車が大破してライフアイテムに変化するので、機会があれば狙っておくべきであろう。
ここを突破するとステージ3。雰囲気が一変し、横スクロールのアクションゲームになるのだが、ボタンを押すと車から弾が発射される。もはやこれはラリーではない
ステージ冒頭で、ヘリコプターが炎上しながら墜落してくるので当たらないように注意して進もう…おっと、スピードを上げてはいけない。残骸にはライフアイテムが落ちているので、忘れずに回収しよう。
カラスや丸太など、およそ襲ってくること自体が間違いの敵がたくさん登場するこのステージ、機銃をフル活用して突破することになる。
ちなみに、ここまでの時点でナビゲーターは何の役割も果たしていない
しかしナビゲーターの本領が発揮される次のステージ4。すでにラリーでないことは散々証明されているが、いままで何度も度肝を抜かれてきたプレイヤーが、さらに度肝を抜かれる展開が待ち構えているのであった。
まず、水の上に橋がかかっている。しかし、途切れ途切れの橋をつなぐために、ドライバー自らジャンプで狭い足場を渡り、スイッチを押さなければならない。
足場を渡る際のジャンプは、助走距離によってその幅が決まるので注意が必要だ。かなり難しく、水の中に落ちてしまうこともしばしば。さて、上に登る手段は…あれ?
ハシゴや階段に類するものは一切用意されていない。いったいどうすれば登れるのか? これはゲームの罠ではないか、くそー、もう2度とやるものか! と、リセットボタンに手を伸ばした瞬間。
車の中からナビゲーターが出現し、ハシゴをおろしてくれるではないか!
やった、これで上にあがれる! このゲームをやっていて初めて、人の優しさに触れられる瞬間である。
ちなみに、ナビゲーターのランクは、ここでハシゴをかけてくれるまでの時間に関係しているといわれている。他には一切影響しない
なお、ドライバーが敵に当たってもライフが減ることはない。あくまでライフは車の数であり、ドライバーの命はそれ以下の価値、という製作者の心のすさみようが見て取れる。
ステージ4の恐ろしさはこれにとどまらない。
さらに進んでいくと、突然海の中にザブーン! と突っ込んでいくではないか!
海の中を進むラリーカー。しかもボタンを押せば機銃が発射される。何度でも言う、これはすでにラリーではない。ただのシューティングゲームだ。
目の前に現れるヒトデ、エビ、サメ、クラゲ、ミサイルなどの海の生き物を倒しながら先に…
ミサイルは違うかもしれないが、そういうことにしておかないともう説明がつかない。
ちなみに、ミサイルは4発撃ち込むことでライフアイテムに変化するので、チャンスがあれば是非回収しておきたい。
さらに、エビは2発撃ち込まないと倒せないようになっている。サメすらも1発で倒れるのに、だ。さすがは甲殻類である。
後半はまた地上に戻り、一気にゴールを目指す。これは幻覚なのか。
ステージ5。ステージ1に近い構成だが、今度は荒れ地を進む展開で、ボタンを押せば機銃が発射される。敵は主に野生生物で、ラクダに至っては機銃をもってしても追い払うことすらできない
モグラは1発で土にもぐるが、もう1発撃ち込むことで…あとは推して知るべし
調子に乗ってハイスピードで進んでいくと、突然目の前に広がる広い川。
この中に落ちると、ライフがいくつ残っていてもゲームオーバーとなってしまう。さっきの海を渡る元気はどこに行ってしまったのだろうか
ここは、いかだの上を器用に渡っていくしかない。納得いかないがそうするしかないのだ。
ちなみに、一応車らしく、前後に何かしらのスピードがないと左右に移動することすらできないので、微調整は実に困難を極める。
ここを突破すると、一応ボーナスステージの後、ステージ6が開始される。このステージは最初から最後まで強制スクロールなので、タイムや燃料を追加する意味は、本当に無い
このステージは、ゲーム中で最も難しく、そして度肝を抜かれるステージであることは間違いないだろう。
ラリーの原型すらとどめていないこのステージ、襲ってくるのは戦車、戦闘機、ヘリコプター。いくら近道だからって、こんな道を行くことはないだろう! ラリーカーが太刀打ちできるわけが…。
試しに戦車に対してAボタンで機銃を1発、発射してみる。
機銃が当たった戦車は、派手な爆発音とともに大破した。
エビやラクダより弱い戦車とは思わなかった。実はペーパークラフトなのかもしれない。
ちなみに、戦闘機・ヘリコプターに対しては、Bボタンの対空砲で攻撃しよう。やはり1発で大破する。恐るべきラリーカーだ。こんな兵器が500万で買えること自体に世の中の矛盾を感じる。
ゲーム自体に矛盾が多すぎる、というツッコミは受け付けない方向で。
ここにはライフアイテムが無いので、どうにか2回以内のミスで突破しなければならない。シューティングが苦手な方には途方もない苦労となる。
あまりにも激しい攻撃をラリーカー1台(いや、3台か)で乗り切り、ステージを突破するといよいよ最後、ステージ7に突入する。
ここは高速スクロールの縦スクロールアクションレーシングゲームで、ある意味最もラリーに近いステージである。崖や山のへりを高速で駆け抜ける爽快感が味わえるが、酷い罠が複数待ち構えているので注意が必要だ。
最終面に語る要素が少ないというのは残念な限りである。もはや普通であることが許されない世界に、ここまでの異常に慣らされてしまったのかもしれない。
仕方がないので、エンディングに期待するしかない!
ゴールすると、少々の演出のあと、画面にはこのように表示される。
「せいせきはぴょう!」
努力が一瞬のうちに水泡に帰す瞬間であった。
タイムにより成績が表示されるが、順位によりエンディング内容に変化は起こらない。やりこみがいのないゲームである。
また、ここまでの酷いラリー…いや、戦争を完走しているのが自分以外に複数いるという事実に、戦慄すら覚える。一体どうやって切り抜けたというのだろうか。
最後は小さくなる車から手を振るドライバーを見送り、大きな「END」の文字とともに終わる。
全体を通し、常軌を逸したゲーム性が漂うが、その割に作りこまれたバランスには賞賛を送りたい。
バカゲーのひとことで片付けるには惜しいものを持っている、杞憂なゲームと言ってよいだろう。
が、名作といえるかどうか、といわれると、黙って首を横に振るしかないのが悲しいところだ。
ネタをネタとして楽しめるなら、1000円出しても惜しくないゲームであろうが、本気でラリーを期待する人には、どうやってもお勧めできない。

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