1チップMSXにまつわるお話(前)

いよいよ予約受付が開始された1チップMSXだが、この得体の知れない物体には謎がいくつも潜んでいる。それをひとつの記事で全て解明することはできないので、2回に分けて書いていこうと思っている。

なお、この記事を書いているのはド素人であり、ここに書き記したことすら知識の受け売りなので、間違っている可能性が高い。それだけ正確な情報を伝えきれていないということを、危機感を持って認識してほしいということもあるが。

まず今回は、1チップMSXの理念・長所について説明していきたい。

現状で、ただ「1チップMSX」という表現がされていることもあり、多くの人の認識では「19,800円もするMSX1」だとしか思われていないような気がする。

実は非常にエポックメイキングなものである。

1チップ化にあたり、MSXのハードウェアを再現するのに使われているものが「FPGA」と呼ばれるこのチップそのものである。ハードウェアそのものを記述する言語「VHDL」を用い、ハードを表現したプログラムを作って、このチップに書き込むことで、それこそ「任意の」ハードとして使うことが可能になる。

この手法を用いることで、「1チップ化」だけでない先のことを見据えたことが可能になる。

たとえばMSXの新規格を提唱して発信したり、MSX以外のほかのハードをエミュレーションしたり。ソフトだけでなく、ハード側からも変えていくことができる。

当初はMSX1相当のハードが搭載されているが、MSX2へのバージョンアップも予定されている。

なぜMSX1で止まっているのか。いちいちMSX2にバージョンアップさせる意図は何処にあるのか。

まだMSX2のエミュレーションが完成していないというのがあるようで、その原因は、どうもスピードが足りないからではないようだ。スピードは出そうと思えば、ターボR以上も出るらしい。いま最も苦労しているのは、画面表示周り(VDP)のスピードが正確に出ないところだという。

まだチューニングにも時間がかかるようだが、それ以上に、「書き換え」そのものをしないと使えないような仕組みを作ることで、多数の人に「書き換え」を楽しむことを知ってもらいたい、というのがねらいのようだ。

ゲームを凄く速くしたり遅くしたり、キャラを強くしたり…。ゲームをちょっと改造するような楽しみを、ハードでも提供するために生まれているのが「1チップMSX」、という考え方もできる。

たとえば、MSXで有名なのが「横1列にスプライトが5つ以上並ぶと消える(モード1時)」という制限であるが、聞けば、これは表示ループ部分の数値を書き換えるだけで、撤廃できるのだという。

もちろん、いままでMSXの枷になってきた様々な制限を撤廃したり、新たなハードを追加したりということも、対象により難度は異なるが、実現することが可能なのだそうだ。ただ、容量には制限があるため、あまりたくさんのハードを入れたり、複雑なものを入れることはできないのだという。たとえばMSX「2」程度のものが入るくらいである。しかし、同程度の規模の他機種なども、共通部分を流用することで、実現の可能性が出てくるのではないかと推測される。

1チップMSX以前にも、FPGAの実験ボードとしての製品はいくつか出ている。しかし、身近には同様の製品がないせいで、イマイチ凄さが理解できない状況にあるのではないか。

今回使用されているチップの容量はかなり大きい部類に入る。12万ロジックゲート、と書いて分かる方はごく少数かもしれないが、多数の構成部品からなるMSXを再現できる容量である。

また入出力端子を豊富に備え、一般にそろえるのが面倒な電源まで付属している。この時点で、入門用としては最適、かつ価格も他のFPGAボードに比べると数分の一に抑えられている。これも聞いた話になるが、この方面の技術に明るい方であれば、通常こういうボードを作った場合、49,800円くらいが妥当だと判断するという。

また、1万台限定という数字であるが、チップの卸価格が非常に安く抑えられており、市場を壊すためということが考えられる。もっとも、安いという基準は現時点でのものであるから、技術の進歩によりチップが進化することを考えれば、発売が遅れれば遅れるほど価格面での格差は縮まると考えられる。

今まで、MSX本体を改造するにはハードウェアの知識と半田ごて、本体を開けるという勇気、そして破壊のリスクを負う責任が必要だった。1チップMSXの登場で、実機ですら難しかったハードウェアを触るという感覚が、恐らくもっとも簡単に得られる手段となることは想像に難くない。

しかし、MSX2へのバージョンアップを含め、書き込みには意外なハードルが用意されているのだが…。これについては次回。

4 thoughts on “1チップMSXにまつわるお話(前)

  1. せいみ

    この1チップMSXって、つまりはZ80とTMS9918とPSGとYM2413が入っているって事ですよね。で、MSX2にするときは、TMS9918をV9938に書き直すことで対応すると。
    では、TMS9918をちょっといじくれば、セガマーク3やマスターシステムとかも再現可能ってことですよね。ということは
    M5とかぴゅう太もできなくないってことですね。
    あと、V9938ってZ80換算でどのくらいの規模なんでしょ。
    2個程度なら、Z80×3のゼビウスの再現とかもOKそうですね。

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  2. ジャラ

    細かいことは私も知らないのでなんともいえないのですが、規模によってはそのくらいのことは可能だということでしょう。
    しかし面白そうです、実現するといいなあと思います。

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